「知ること」から命は守れる——Reef Knotが“蛇口を閉める”ために続けること

「知ること」から命は守れる——Reef Knotが“蛇口を閉める”ために続けること

命は、ある日突然目の前に現れる。交通事故に遭った一匹の猫。
あの夜の選択が、Reef Knotの始まりだった。

助けることはできる。けれど、また次の電話が鳴る。
譲渡よりも多い保護依頼。頭数が増え続ける現場。

だから彼らは、保護と譲渡の先へ進んだ。
「蛇口を閉める」ために、教育という選択をした。

今回、Reef Knot代表・飛田さん、そしてスタッフの井渕さんに話を聞いた。
これは、続けるための、選択の話だ

1.    「最後の日、何をする?」——活動の原点になった問いと、あの夜の猫

―まず、Reef Knotを始めたきっかけを教えてください。

飛田さん:いくつかの出来事が重なったのがきっかけです。
まず前職を辞めようか悩み始めたとき、スティーブ・ジョブズの「もし明日世界が終わるなら、最後までやりたい仕事をしなさい」みたいな言葉を思い出して。
当時の仕事が本当に嫌いで、「最後の日までこれは無理や」って思ったんです。

そこで「最後の日、何するやろ」って考えたら、顔も洗えへんかもしれんけど、飼っている子の世話はするな、と。ご飯も大好物をあげる。
そう考えたとき、動物に関わる仕事かもしれないと、初めて思いました。

あと昔、殺処分のテレビ番組が結構あって、「本当にそこまでしないといけないのか?」ってずっと引っかかっていました。
さらに遡ると、小4の時に『ハチ公物語』を見て「動物ってすごい」って思ったのも大きいです。

決定的やったのは、うちのマンションの駐車場に住み着いた猫ですね。1週間くらい、毎日足元にすりすりしてきて。
ある日いなくて、探したら階段下から弱々しく出てきた。頭が泥だらけに見えたけど、近づいたら皮がめくれていて骨が見えていた。
多分、車にひかれたんやと思って夜間救急に連れて行きました。夜中12時で、費用も10万以上かかった。

でも病院で言われたのが、「この子、連れて帰ってもらわないと」って。
「僕の子じゃないんです。外の子です」って言っても、結局そうなる。包帯ぐるぐるのまま外に放せない。
俺、猫飼うんか」ってなって連れて帰りました。

その後、一般の病院に通っていたら「この子、うちの患者かもしれません」って話になって、飼い主さんが見つかったんです。
キャリーから飛び出して迷って、うちのマンションに固まっていたらしい。結局、飼い主さんに戻しました。

その一連があって、思ったんです。
「もし自分がペット不可物件やったら、助けてあげられへんの?」って。
交通事故の子がいて、病院に連れて行けても、家で抱えられない人はどうするんやろって。
保健所の子もそうやし、「殺さなくてもいい方法ってあるんちゃうか」って。

調べたら「自分でできるかも」って、正直安易に考えた部分もあります。
でも実際に保護施設を見に行ったら、とんでもない頭数で、「こんなに困っている動物おるんや」って。
それで会社を退職して始めました。長くなりました。


―それまでは動物に関わる活動は?

飛田さん:自分ではインコを飼っていました。鳥が好きで。動物は基本なんでも好きです。


2. 保護と譲渡に加えて、教育——絵本と出前授業で「蛇口を閉める

―現在どのような活動を中心に行われていますか?

飛田さん(参加者2):保護と譲渡に加えて、特に力を入れているのが教育です。
教育のための絵本制作や書籍の発信も重きを置いていきたいと思っています。

井渕さん:絵本は小学校に寄贈していて、今で2150冊くらいです。

飛田さん:授業の依頼があれば、小学校の道徳の時間をお借りして「命について」話したり、本の読み聞かせをしたり。
もちろん保護・譲渡もやっていますが、啓発はもっとやっていかないと、と思っています。

井渕さん:目の前の子を助けるのは当たり前で、これから先の子たちに繋げないと、結局また繰り返しになる。
私たちはよく「蛇口を閉める活動」と言っています。

飛田さん:どこの団体も頭数は限界です。
今は譲渡希望より保護依頼の電話のほうが明らかに多い。
だから元を断たないといけない、という気持ちがあります

3. 迎え入れの最初にすること——隔離・医療・その子のペースを尊重するケア

―猫ちゃんを迎え入れる際に最初に行うケアや対応を教えてください。

飛田さん:まずは感染症対策として隔離を行います。
一時的に相手側で保護できるなら潜伏期間をみてもらって、落ち着いたらこっちで病院へ。
検査やワクチン、避妊去勢は必ず。
ノミやダニの駆除も必ず行います。体が汚れている子は、負担に配慮しながら先に洗うこともあります

井渕さん:その子の性格によって、ケージからスタートしたり、猫が大丈夫な子は早めに部屋デビューしたり。
無理やり頑張らせるんじゃなくて、相手のペースを尊重して見ています。


4. 楽しい話ばかりじゃない——“さわらと、胸が詰まる現場の記憶


―印象に残っている出来事や、「この活動を続けてよかった」と感じた瞬間を教えてください。

井渕さん:印象は多すぎて。ただ正直、楽しい話ばかりではありません。

飛田さん:僕はさわらかな。

井渕さん:16年間ケージに閉じ込められていた子で、ほぼ虐待みたいな状態で、近所の方が見かねて保護依頼をしてくれました。

飛田さん:保護の現場でも猫ちゃんの怒り方がすごくて、飼い主さん側の対応もきつかった。捕獲した後に娘さんとLINEを繋いだら、最初の連絡が「動画も写真も送ってこないでください。鳴き声が嫌いなんです」って。
何のために繋がったんやって。
電話を切ったあと、体に出るほどでした。

井渕さん:でも今は触れるし、抱っこもできるし、甘えにも来てくれる。
聞いていたのは「一切触れない」だったのに、心を開いてくれた瞬間は、やっていて良かったって思えました。

あと依頼で多いのは、飼い主さんが亡くなったり施設入居で残された猫。
部屋が物だらけで、玄関開けても奥に入れないこともある。
亡くなられた場所のすぐそばに猫がいた、みたいなケースもあって精神的にきついです。

飛田さん:想像すると、胸が詰まるような現場もあります。
ただ、だからこそ「その日保護してくれ」じゃなくて、前もってできることがあるんじゃないか、って話もしています。

井渕さん:譲渡は嬉しいけど寂しさもある。
育てた子が里親さんの家で「ヘソ天して寝てる」とか、施設では見せなかった表情が届いた瞬間に「行けてよかったね」って初めて思えることもあります。
嬉しさと同時に、少し寂しさもあります。

5. 誇りよりも現実の中で——Reef knotの強みは「シニア猫」と支援の輪

―この活動を誇りに感じることや、団体としての強みはどこでしょう。

飛田さん:難しいですね
最初は「尊い活動だ」と思ったけど、やり始めると「すごいことしてる」って感覚は薄れていく。

井渕さん:周りからは言われるけど、こっちはそのつもりでやってないというか
困っている子がいたら助けたいって、みんなが思ってほしい。
命って大事じゃないの、っていうのは伝えていく必要があると思っています。

井渕さん:強みで言うとシニア猫が多いのは特徴かもしれません。
飼い主さんが他界などで来る依頼が多くて、10歳超えの子も多い。
大人猫は譲渡が難しいって言われがちだけど、「Reef Knotは譲渡できているよね」って周りから言われることはあります。

飛田さん:ただそれは僕らがすごいというより、里親さんや支援者さんがすごい。無理のないいい距離感で支えてくれる人が多いです。駅でチラシ配って出会った大学生が絵本の絵を描いてくれたり支援者さんの存在は大きい。


6. 条件だけでは決めない——譲渡で最も大切にする「人間性」と違和感

―里親募集・譲渡で大切にしている基準は?

飛田さん:条件は一般的なものと大きく変わらないと思います。脱走対策とか。ただ、条件が整っていても、必ずお渡しするわけではありません。最終的には僕が決めます。直感的に違和感がある場合は慎重になります。自分の大事にする感性と近い人じゃないと難しい。

井渕さん:細かい条件より人間性のほうが大事。
ペット可や年収が良くても、虐待しそうなら渡せない。
年齢制限も一律に設けてないけど、
ご年齢によっては子猫が難しい場合もあります。うちは18歳の子もいるので、その方に合う年齢の子をおすすめします。
それでも「子猫がいい」って方には、できるだけ話して納得してもらう。
ここがダメで「ペットショップで買った」になると本末転倒なので。

飛田さん:高齢の方の寂しさは理解できます。ただ、万が一のケースも現実にはあります。保護団体としては、動物側に傾いておくべきやと思います。

7. 続けるために避けられない壁——資金とお願いする苦しさ

―活動を続ける中で、悩んだこと、大変だった経験は?

飛田さん:お金の件は、どこもそうやと思います。自走するのは難しい。

井渕さん:(飛田さんは)寄付をいただくこと自体が申し訳ないって気持ちが強くて、でも寄付がないと回らない部分もある。ずっと苦労しています。

飛田さん:本音として「助けてください」って言うのは苦しい。
クラファンも本当はやりたくない、巻き込みたくないって気持ちがある。
でも支援して「一緒に助けたい」って言ってくれる人もいる。
その気持ちを受け取っていることを忘れたらあかんなって思っています。


8. 命を教えるのは、未来を守ること——絵本でつくる入り口

―書籍や絵本の制作、学校への寄贈や出前授業など教育現場に広がる活動に込めた思い、子どもたちに伝えたいことは?

飛田さん:人の命については学校で学ぶ機会がありますよね。
動物の命も、本来同じ重さのはずです。だから学校で学ぶことが大事やと思ったんです。
『ごんぎつね』みたいに、大人になっても心に残るものがある。
そういう授業やきっかけを作れたらって。

もちろん僕らが全部の学校に行けるわけじゃない。
でもこういう活動が広まって、多感な時期に「命」を伝える文化になってほしい。
時間はかかるけど、誰かがやらなあかんことやと思っています。

井渕さん:子どもって残酷な面もある。虫をモノみたいに扱ってしまうこともある。だから「動物にも感情がある」「心がある」「人と一緒」って伝えたい。いじめや虐待にも繋がってしまうから、痛みを知ってほしい。地道に。

飛田さん:刺激が強すぎるものは出せない。
怖いから見たくない、悲しいから関わりたくない、って人が多い。
だから入口は柔らかくして、絵本みたいに入りやすい形がいいと思います。

9. 150万円の覚悟と2か月の震え——物件を押さえた決断の背景

―クラウドファンディングで自己資金を投じて物件を確保する決断の背景は?

飛田さん:150万円の頭金を先に入れる必要があり、失敗すれば戻らない状況でした。物件見つけてから購入まで、押さえないといけない期間があって

井渕さん:キープしてくれるところは少ないので、出すしかなかった。
それまで移転したいって何年も探してきたけど、条件が合わないことばかりで。
大阪は動物取扱業ができる地域がほとんどない、区域の条件もある。
去年ちょうど紹介してくれる人に出会って「今移らないと、また無くなるよ」って。

飛田さん:正直、目標額に届くか不安でした。
でも150万失ったら経営が傾く。成功するしかない。

井渕さん:前のテナントは窓が少なくて、日が差さない部屋もあった。
そこで白血病やエイズ、腎臓で亡くなる子もいて、
「この環境で最後を迎えるのは嫌」って気持ちが大きかった。
少しでも良い環境で過ごしてほしくて、ここはやるしかないって。

飛田さん:募集期間の2か月は震え上がっていました。
不安と、支援してくれる人への申し訳なさが重なる。
アンチは来ると思っていたけど、
心ない言葉が届いたときは、やはり堪えました。でも結局、伝わったのかなとも思いました。アンチはそれ1件だけでした。


10. 届けたいのは知らない人——「最後まで大切に」を広げるために

―今後目指したいこと、読者へのメッセージをお願いします。

飛田さん:まずは「知ること」から始まると思っています。
これを通じて知ってもらう、そこがまず大事。

井渕さん:今は興味ある人しか知らない世界になっている。
テレビはまだ偶然入ってくるけど、YouTubeになると自分の好きなものしか見ない。
すでに関心のある方には届いています。
これから迎える人にこそ、知ってもらわないと意味がない。

飛田さん:僕も猫を飼うつもりじゃなかったけど、交通事故の子と出会った。
興味がない人、飼う予定がない人でも「こういう場合どうしたらいいか」を知っておいた方がいい。
最近は市議会議員さんとの繋がりもできてきたので、働きかけもできたらなと思います。
メッセージとしては
いま一緒にいる子を、どうか最後まで大切にしてほしい。
もしよければ、身近な人にも伝えていただけたら嬉しいです。

 

ブログに戻る