「保護=かわいそう」だけじゃない。
ほごっこCAFEにいる犬や猫は、驚くほど自然体だ。
助けるために通う場所ではなく、好きになった結果、迎えることがある場所。
ここには、涙を誘う演出も、声高な正義もない。
あるのは、続けるために選び続けてきた現実的な答え。
代表の坂さんの言葉から、犬・猫・人が無理をしない“幸せの形”を探る。

1. 自宅から始まった保護。「やりたかった」より「タイミングが来た」
ー ほごっこCAFEとして活動をスタートするに至ったきっかけや背景を教えてください。
坂さんー ここ自宅なんですけど、息子が東京に出ていくタイミングと、前の仕事を辞めた時期が重なって。ここで一人暮らしになるから、ちょっと好きに使わせてもらおうと思って始めました。
ー もともとカフェや保護活動をやりたい気持ちはあったんですか?
坂さんー 保護活動はボランティアでやってました。あとは、たまたまタイミングが合った、って感じですね。
2. 人に慣れる場所としてのカフェ。
“自宅感”が生む、譲渡までの自然な距離
ー 今はどのような活動を中心にされていますか?
坂さんー 保健所とか動物愛護センターから犬や猫を引き受けて、ここでお客さんと会ってもらって、縁があれば譲渡する、という流れです。
ー 一般的な猫カフェとは違うと感じますが、特に大切にしている考え方はありますか?
坂さんー “こだわり”ってほどでもないけど、この子たちは人慣れのためにお客さんに来てもらってます。だから緊張感がないでしょ。カフェ感というより、自宅感ですね。里親さんのところに行って慣れるのも、1秒かからない。自然な感じで新しいスタートが切れるように、ここで人に慣れてもらう。
ー 人慣れしていない子もいますか?
坂さんー いますよ。触れるようになるまで5年かかった子もいる。子猫から来た子は比較的すんなりですが、時間がかかる子は本当にかかります。
ー 慣れていくために、何かしていることは?
坂さんー もう自然に任してます。不特定多数のいろんな人が来て、普通の猫カフェと違って「触りたかったら触ってあげてください」っていうスタンス。起こしてもいいし、抱っこもオッケー。気遣わんと、人間本位で触ってもらうことで、猫ちゃんが人の動きにいちいちね、神経質にならなくなるんですよ。
人の動きに慣れてもらう。禁止事項をあまり設けずに、普通におらすって感じですね。
ー 上の階もあると伺いました。
坂さんー 慣れてない子は上にいます。基本はお客さん入らんようにしてるけど、慣れてる常連さんで扱いうまい人には、様子見ながら上がってもらうこともあります。

3. 幸せは理想じゃなく、状態。
「しんどくなければ、それでいい」
ー “犬も猫も人も幸せに”というテーマがあります。坂さんの考える「幸せ」とは、どんな状態でしょう?
坂さんー 人が幸せじゃなかったら犬も猫も幸せになれんと思ってる。バランスですかね。綺麗な言葉とか熱い思いを求められることもあるけど、私はただ犬や猫が好きで、好きなことを仕事にしただけ。
ー その“幸せ”は、ここにいることなんでしょうか。
坂さんー ここにおることが不幸なわけじゃない。でも里親さんのところに行ったら、みんなすごくいい顔になる。ここにおるよりも、上の幸せがあるから、家族を見つけてあげたいって気持ちはあるけど、ここにおる子たちはまだそれを知らないから、ご飯食べれて、安気に過ごせて、しんどくなければ、とりあえずそれでいいかな。
ー たしかに、こんなにくつろいでる猫たちはなかなか見ないです。
坂さんー お客さんでごった返しててもこの調子。膝に乗ってくるし、飛びつくし、運動会始めるし、好きなように動いてます。
4. ルールで守らない。
慣れることで守るという考え方
ー 安心して過ごせるように、空間づくりや接し方で工夫していることは?
坂さんー もうこのまま。よく「他の猫カフェと違う」って言われるけど、ルールをあまり厳しくしてないからかな。
ー 最低限のルールはありますか?
坂さんー 写真撮るときはフラッシュ切ってください。それだけ。ちっちゃい子が来たら「走ったらあかんよ」「飛んだり跳ねたりはやめてね」くらい。
ー ここまで落ち着いているのが印象的です。
坂さんー 「触らないのがストレス対策」って思う人もいるけど、慣れるっていうのもストレス対策になる。触られ慣れてるから、人がそばにおっても身構えないんですよ。
5. 「保護でお金を取るのはいやらしい?」
その違和感から逃げなかった理由
ー 続ける中で大変だったことは?
坂さんー ずっとお金ですね。うちはNPO法人にもしてない。非営利っていうのがピンと来なくて、稼がんと続かんでしょう。最初から「商売でやってます」「個人事業主です」って言ってます。
ー その姿勢は珍しいかもしれません。
坂さんー でも「保護犬・保護猫でお金を稼ぐのがいやらしい」みたいな風潮がちょっとしんどいですね。寄付も募るけど、“お涙ちょうだい”って感じがちょっと苦手なんです。
ー SNSでは特に、反応の出方が偏ることもありますよね。
坂さんー 病気の子や亡くなった子の報告の時だけ、いいねが多い。かわいそうを求められている気がするんですけど、可愛いだけで十分じゃないですか?命を守ることはやっているけど、オープン当初から「かわいそう」は言わないと決めています。
ー それでも続けていくには資金が必要です。
坂さんー かわいそうでお金を集めようとすると、場合によっては“かわいそう”を演出しないといけなくなる。その矛盾が嫌なんですよ。かわいそうじゃない状態を「ほら、みんな楽しそうよ」って見せるほうがいい。保護もビジネスとして、お仕事として浸透したらいいと思ってます。
ー 譲渡会には出られないんですか?
坂さんー しないです。この子達をケージに入れて並べているのを見たくないので、ここだけ。
ー ここは“出会い方”も独特ですね。
坂さんー 多いのが「買う気なかったのに、通ってるうちに飼うことになった」パターン。助けるために飼うというより、“推しを迎える”感じのほうが猫も楽しいと思う。
6. 条件は緩く、判断は厳しく。
“スペック”より“価値観”を見る譲渡
ー 譲渡の条件や、大切にしている考え方は?
坂さんー 本人がどうしようもできんことは条件に入れてない。1人暮らし、未入籍、日中留守…それは個人の自由やし、現実的に難しい。
ただ「自分でどうにかできること」は条件にします。例えばペット不可の家をペット可にする、とか。年齢は条件に入れてます。
ー 条件は柔らかい分、別の見方をする?
坂さんー うちは何回も来てもらいます。2回、3回と話して、問題ないならトライアル。胡散くさいと思ったら断る。条件は緩いけど、ハードルはある。価値観違う人には渡さない。
ー 価値観というと?
坂さんー 例えば脱走していなくなったから次、みたいな感覚。あとは猫に使うお金を“もったいない”と思う人。お金があるなしじゃなく、そう思う時点でやめといた方がいい。
子どもに「あなたが世話しなさいよ」って背負わせる家も無理。子どもに背負わすには重たすぎる。親がまず責任持って飼うと決めて、そこに子どもを引き入れるべき。
ー トライアルも特徴がありますね。
坂さんー 1ヶ月です。1ヶ月経っても「うちの子にします」って言い切れん場合は返してってお願いする。縁じゃないから。慌てんで、ゆっくり考えてねって。
7. 勧めないから、決まる。
通ううちに生まれる「迎える覚悟」
ー 印象に残っている譲渡のエピソードは?
坂さんー 猫を飼いたいって来た人が、ワンちゃんの部屋に行った瞬間「この子にします」って言ったりね。
よくあるのは「飼えない理由」を並べる人が、来る度に一つずつ言い訳がなくなって、最終的に飼うことになる。こっちが勧めなくても自分で決めていく。
ー 迎えた後の変化もありますか?
坂さんー 慣れるのが早いから、ケージも“必要になったら後から買えばいい”って言う。1秒のためにケージいらんじゃろって。
ワンちゃんで、うちでは要求鳴きがうるさい子が、里親さんのところに行ったら全く鳴かなくなった、っていうのもあります。満たされると変わる。
トライアル失敗して帰ってきても「おかえり」って感じ。返してくれてもありがとう、正式譲渡になってもありがとう、です。
8. トライアルの前の、もう一歩。
暮らしを想像するためのワンクッション
ー ほごっこショートステイを始めた背景は?
坂さんー 飼いたいけどアレルギーが不安な人がいて。ここで遊んで大丈夫でも、一晩一緒におったら出るかもしらん。トライアルは重いけど、アレルギー確認だけしたい。そんな会話の中で「一晩試せたらええな」で始めました。
ー 実際の成果や課題は?
坂さんー 最初は何人か使われました。ショートステイで「猫と暮らすの楽しい」ってなって、改めてトライアルに進むケースもあった。
ただショートステイは費用がかかる。トライアルは無料なので、話の流れでそちらを勧めてしまい、今はあまり活用できていません。でも“ワンクッション”として制度自体はありだと思う。
ー 以前はお金をいただくこと自体に迷いも?
坂さんー オープン当初は、里親さんからお金をもらうのに罪悪感があって、譲渡代ももらってなかった。でも里親さんから「お金取らんと続かん」って言われて、何年かかけて感覚が変わりました。
ー 譲渡費用は?
坂さんー 一律3万円+避妊去勢手術代・ワクチン代。猫は血液検査、犬は狂犬病と登録費。長くいればワクチン回数も増えるから、その分はプラスになります。

9. 犬猫に囲まれる日常そのものが、答え
ー 「やっていてよかった」と思う瞬間は?
坂さんー これをやること自体が幸せです。犬猫好きにはたまらん生活してると思う。もっと早うに始めたらよかった。
こんなんしたいって人がおったら「お金大変よ」って言うけどね。かわいいでしょう。
10. 保護かどうかじゃない。
「どこで出会ってもいい」という選択肢
ー 保護に関わったことのない方に、まず伝えたいことは?
坂さんー 楽しんでほしい。保護犬・保護猫の“暗い現状”を知ってほしいというより、来た人が「イメージが変わる」って言うんですよ。保護犬でも保護猫でも、ただかわいいよって。
ー 線引きをしない、ということですね。
坂さんー そう。保護だから、ペットショップだから、ってギスギスせんでいい。出会いは縁だから。ここで出会って連れて帰った人も、もしその子がペットショップにおっても選ぶと思う。
だから、もっとフラットに。「どこで出会ってもいい」って空気になればいい保護する側のアピールの仕方も、もっとフラットになっていけばいいと思っています。




