2011年、土砂降りの道路で、事故に遭った一匹の子猫が横たわっていました。
その子の名前は「ラブ」。
「この子を、このままにしておくことはできない」。その思いから始まった行動が、保護猫カフェlove.labの原点です。
現在、love.labは年間約150〜200頭の猫を保護・譲渡し、これまでに2,000頭以上を新しい家族へつないできました。
しかし、目指しているのは、保護する猫を増やすことではありません。いつか、love.labのような活動を必要としないほど、行き場を失う猫がいなくなることです。
活動の始まりから、譲渡で大切にしていること、病気や障がいのある猫たちとの暮らし、そして今回のコラボレーションに込めた思いまで伺いました。
一匹の猫にできることから始まった
ラブと出会った当時、保護猫活動について詳しい知識があったわけではありませんでした。
ただ、目の前に助けを必要としている小さな命がいました。そこでラブを保護し、病院へ連れて行き、必要な治療を受けさせ、新しい家族を探しました。
最初から大きなことをしようと考えていたのではなく、目の前の一匹にできることからの出発でした。
ラブを助けたことで、それまで知らなかった保護猫を取り巻く現実に触れるようになりました。一方で、活動を続けるほど、一人で助けられる命には限界があることも分かってきました。
それでも、「できない理由を探すのではなく、今の自分にできることを一つずつやろう」と、活動を続けてきました。
その後、県外にある保護猫カフェの活動を知り、郡山市にも猫と人が出会える場所をつくれば、より多くの命を救えるのではないかと考えたことから、保護猫カフェという形を選びました。
「love.lab」という名前には、すべての始まりとなったラブへの感謝と、一匹一匹の命に愛情を持って向き合い、猫と人がともに幸せになれる未来をつくりたいという思いが込められています。
「譲渡すること」をゴールにしない
郡山市保健所から猫を引き受けた後は、まず健康状態を確認し、その子に必要な医療やケアを行います。
特に子猫の場合は、月齢や体調に合わせて24時間体制で成長を見守ります。健康状態が安定し、マイクロチップの装着やワクチン接種など、必要なケアを終えてから譲渡へと進みます。
譲渡を希望する方は、最初に郡山市保健所の審査を受けます。審査後に申請を行い、許可証が発行された後、love.labで猫とお見合いをします。そこでご縁がつながれば、譲渡となります。
しかし、猫を新しい家族へつなげれば、それで終わりではありません。譲渡後も、郡山市保健所とlove.labの双方がアフターケアを行い、新しい家庭で安心して暮らせるよう支えています。
love.labが大切にしているのは、「譲渡すること」をゴールにしないことです。
猫を迎えることは、その子の命を最期まで預かることでもあります。家族全員の同意があるか、完全室内飼育ができるか、必要な医療を受けさせられるかなど、生涯安心して暮らせる環境であることを確認します。
生活環境や家族構成、先住猫の有無、その猫自身の性格も踏まえ、「この子が、このご家族のもとで本当に幸せに暮らせるか」を最も重視しています。
一頭でも多く譲渡することだけが目的ではありません。一頭一頭に合った家族を見つけ、猫と里親様の双方が「出会えてよかった」と思えるご縁をつくり、その幸せが譲渡後も続いていくことを大切にしています。
行政、SNS、実際に出会える場所
譲渡可能な猫の譲渡率100%を支えているのが、行政との連携、SNSでの発信、そして猫と人が実際に出会える保護猫カフェです。
love.labの強みの一つは、長年の活動を通して築いてきた郡山市保健所との信頼関係です。
民間団体だけで保護活動のすべてを担うことには限界があり、行政だけで対応することが難しい部分もあります。だからこそ、それぞれの役割を理解し、情報を共有しながら、「一頭でも多くの命を幸せにつなげる」という同じ目的に向かって協力しています。
SNSでは、猫の写真や動画だけでなく、その子の性格や日々の様子、保護された背景も発信しています。その投稿をきっかけにlove.labを知り、実際に足を運ぶ人も少なくありません。
SNSで存在を知り、カフェで実際に触れ合い、その子の性格を知る。行政との信頼関係、SNSによる発信、猫と人が出会える場所の三つをつなぎ、一頭一頭のご縁を大切にしてきたことが、現在の譲渡につながっています。
「かわいそうな猫」として生きているわけではない
love.labでは、病気や障がい、高齢などの理由から、譲渡が難しい猫も受け入れています。
脳性麻痺の「あんず」と、虐待によって両脚を失った「メルモ」は、すでに亡くなっています。しかし、ともに過ごした時間や、二匹から教えられたことは、現在の活動にも受け継がれています。
現在も、てんかん発作を抱える「ぽんず君」や、建物火災によって重度のやけどを負った「みーくん」など、さまざまな事情を抱えた猫が暮らしています。
love.labが大切にしているのは、病気や障がい、高齢であることだけを理由に、その子の幸せの可能性を決めないことです。
できないことを見るのではなく、その子に「できること」を見る。今、何を必要としているのか、どうすれば少しでも穏やかに、安心して毎日を過ごせるのかを考えています。
障がいや病気があっても、その子自身は「かわいそうな猫」として生きているわけではありません。ごはんを食べ、眠り、甘え、遊び、時には怒りながら、その子なりの毎日を懸命に生きています。
だからこそ、「かわいそう」という気持ちだけで向き合うのではなく、一頭の命として、その子らしく生きられる環境をつくることを大切にしています。
すべての猫が、新しい家族への譲渡につながるわけではありません。それでもlove.labで安心して暮らし、その子らしい時間を過ごし、最期まで「ここにいてよかった」と思える場所でありたい。
あんずやメルモから受け取った命のバトンは、今を生きるぽんず君やみーくん、そしてこれから出会う猫たちへとつながっています。
譲渡した日から、新しい生活が始まる
これまで数え切れないほどの猫や里親様と出会ってきたため、特定の一頭だけを「最も心に残っている猫」として挙げることはできないといいます。
その中でも、何よりうれしいのが、譲渡後に里親様から届く近況報告です。
「こんなに大きくなりました」
「毎日元気にしています」
「家族みんなに甘えています」
「この子が家に来てくれて本当に幸せです」
こうした言葉とともに、安心して眠る姿や、家族に甘える写真が届きます。
保護された当時は弱っていた猫や、人をなかなか信用できなかった猫が、新しい家族のもとで幸せそうに暮らしている。その姿を見るたびに、「あのとき、この子を助けることができてよかった」と感じます。
猫を里親様へ渡したら、そこで終わりではありません。譲渡した日から、その猫と新しい家族の生活が始まります。
何年先も幸せに暮らしていることを知れること、そして里親様から届く「今も幸せに暮らしています」という一つひとつの報告が、活動を続ける力になっています。
支援が「今日のごはん」と「必要な治療」になる
今回のEAGER BEAVERとのコラボレーションによる寄付金は、保護猫の医療費や餌代をはじめ、猫たちが安心して暮らすために必要な飼育費全般に活用される予定です。
保護される猫の中には、すぐに治療が必要な猫や、継続的な投薬・通院を必要とする猫もいます。乳飲み子から高齢の猫、病気や障がいのある猫まで、それぞれの状態に合ったフードや飼育環境も欠かせません。
日々の食事、医療、衛生用品。一つひとつは日常的に必要なものですが、それを継続して届けることが、猫たちの命と幸せを支えています。
今回の支援によって、必要な治療を諦めずに受けさせること、十分な食事を与えること、一頭一頭が安心して過ごせる環境を維持することができます。
商品を手に取ってくださる皆さまの思いが、保護猫たちの「今日のごはん」や「必要な治療」、そしてその先の幸せへとつながっていきます。
目指すのは、保護活動が必要なくなる未来
今、love.labが特に知ってほしいと考えているのは、どれだけ保護活動を続けても、保護を必要とする猫が次々と生まれている現実です。
乳飲み子、けがをした猫、病気の猫、高齢の猫。さまざまな事情によって、行き場を失った猫たちがやってきます。
目の前の一頭を助けることは、もちろん大切です。しかし同時に、「なぜ、この子は保護されなければならなかったのか」にも目を向ける必要があります。
飼い猫に不妊・去勢手術をすること。完全室内飼育を徹底すること。最期まで責任を持って飼うこと。野良猫に餌を与えるだけで終わらず、不妊・去勢手術など、その先まで考えること。
一人ひとりの行動が、これから保護される猫を減らすことにつながります。
保護猫活動に参加する方法は、猫を引き取ることや里親様になること、寄付をすることだけではありません。
現状を知ること。家族や友人に伝えること。SNSで活動を知り、発信を広めること。これから猫を迎えるときに、「保護猫を迎える」という選択肢を思い出すこと。それも大きな力になります。
love.labが目指しているのは、保護する猫を増やすことではありません。いつか、こうした活動が必要なくなるほど、行き場を失う猫がいなくなることです。
「自分にできることを、できるところから。」
その小さな一歩が、一頭の猫の未来を変えることにつながると、love.labは信じています。

