小学4年生の時に、香川県で犬や猫が殺処分されている現状を知った一人の少女。
「自分にも何かできることはないだろうか」
その思いから、迷子を防ぐための手紙やポスターを自分で作り、地域のお店や知人に掲示をお願いする活動が始まりました。
犬と猫と人が、みんな笑顔で暮らせる社会にしたい。
そんな願いから生まれたのが、学生愛護団体「ワンニャンピースマイル」です。
現在は香川を拠点に、岡山、大阪、京都、滋賀、宮城、神奈川にも活動の輪を広げ、保護された犬や猫のお世話、里親探し、譲渡会、啓発活動などに取り組んでいます。
今回は鈴木さんに、団体誕生の背景、保護犬猫との向き合い方、学生が活動する意味、そして今後実現したいシェルターへの思いを伺いました。

1:小学4年生の「何かしたい」から始まった
ワンニャンピースマイルという名前に込めた思い
ーワンニャンピースマイルという名前に込められた思いと、団体として活動を始めたきっかけを教えてください。
鈴木さん:娘が小学4年生の時に、命の大切さや、香川県の殺処分の現状を知ったことが始まりです。
「自分にできることはないかな」と考えて、迷子にさせないための手紙やポスターを作り、カフェや知り合いのお店、近所の方にお願いして貼ってもらっていました。
娘は当時、不登校の子どもたちが通う塾に行っていました。
そこで、「犬と猫と人が、みんなニコニコ暮らせる社会にしたい。一緒に活動せん?」と声をかけ、塾の仲間たちが集まったんです。
団体名を考える時に、娘が思いついたのが「ワンニャンピースマイル」でした。
今使っているロゴも、その時に娘が手描きしたものです。
ー動物愛護の活動を選んだ背景には、どのような出来事があったのでしょうか?
鈴木さん:子どもたちが小さい頃から、シルバーという犬と一緒に暮らしていました。
その子が病気になり、苦しみながら亡くなったんです。
子どもたちは「犬も亡くなるんだ」「どうしたら生き返ってくれるんだろう」と、とても悲しみました。
その経験をきっかけに、親子で命の大切さを伝える絵本を作り、クラウドファンディングで出版しました。
シルバーの死や、殺処分される犬猫の現状を知ったことで、「命を助けたいのに、なぜ人の身勝手な行動で命が消されるんだろう」という思いが強くなっていきました。
最初はポスターなどの啓発活動が中心でしたが、それだけではなく、実際に命を救いたいと考えるようになり、近所の猫を保護するようになりました。
そこから譲渡会も必要になり、少しずつ本格的な保護活動へと広がっていきました。
2:怖いのではなく、人を知らないだけ
活動を通して変わった保護犬猫への見方
ー活動を始めた当初と現在とで、保護犬や保護猫に対する見方に変化はありましたか?
鈴木さん:野犬は「怖い」「噛みつく」と思われることが多いですが、実際に向き合ってみると、とても純粋な子が多いと感じます。
人間をほとんど知らない子もいて、初めは震えて触らせてくれなくても、一度心を開くと、その人のことをまっすぐに見てくれるんです。
一方で、虐待やネグレクトを経験した犬や猫は、人に対する恐怖が強く、心を開くまでに長い時間がかかることがあります。
自分を守るために噛もうとしたり、突然反応したりすることもあります。
そういう子に必要なのは、時間と、その子だけに向き合える環境です。
ー里親さんへつなぐ際にも、その子に合わせた対応が必要なのでしょうか?
鈴木さん:そうですね。
保護犬や保護猫を迎えたいと言ってくださる方は多いですが、ただ「ペットを飼いたい」という気持ちだけでは難しい場合もあります。
猫が壁を傷つけることもありますし、散歩に出られない犬が、室内で排泄してしまうこともあります。
脱走防止のため、サークルの設置などの対策は必ず必要です。
また、その子が安心して過ごせる大きさのケージやサークルを用意することも大切です。
その子の性格や過去を見ながら、どのように触れ合えばいいのか、どのような環境を用意すればいいのかをお伝えしています。
譲渡して終わりではなく、その後のケアも続けています。

3:香川から全国へ広がった活動の輪
保護、譲渡、親子で楽しめるイベント
ー現在は、具体的にどのような活動を行っていますか?
鈴木さん:香川を拠点に、岡山、大阪、京都、滋賀、宮城、神奈川に支部があります。
殺処分される可能性のある子や、保健所から引き出した子、地域から相談を受けた子たちを、メンバーで手分けしてお世話し、里親さんにつなぐ活動をしています。
月に一度、団体主催の譲渡会やイベントも開催しています。
譲渡会だけではなく、キッチンカーや縁日など、親子で楽しめる企画も取り入れています。
お父さんやお母さんにもゆっくりしてもらえるように、リラクゼーションの企画を行うこともあります。
親子で遊びに来られるイベントになるよう、さまざまな企画を取り入れています。
ー県外にも活動が広がったきっかけは何だったのでしょうか?
鈴木さん:絵本を作るために行ったクラウドファンディングや、テレビなどで活動を取り上げていただいたことがきっかけです。
娘が不登校や発達障害について話したことで、同じような悩みを持つ子どもや保護者の方から、「自分たちにもできることはありませんか」と連絡をいただくようになりました。
最初は、娘と同じように手紙やポスターを作り、地域で啓発するところから始めてもらいました。
学生は進学や就職、部活動などで活動を続けることが難しくなる場合もあります。
現在は、子どもたちだけでなく、車での搬送や預かり、お世話など、大人にしかできない部分を支えてくださる方にも加わっていただいています。
4:学校だけではない、もう一つの居場所
日常生活と活動を両立するために
ー学校生活や進学などと活動を両立するうえで、大変なことや工夫していることはありますか?
鈴木さん:もともと不登校の子が多く、学校に行っていなかったからこそ活動に時間を使えた部分もあります。
コロナ禍でオンライン授業や通信制の学校が広がったこともあり、それぞれの生活に合わせて活動できるようになりました。
学校へ通っている子は、土日やイベントの日を中心に参加しています。
娘も通信制高校を卒業し、アルバイトをしながら活動を続けてきました。

5:命がつながった瞬間が、続ける力になる
活動していて本当に良かったと感じること
ーこれまでの活動の中で、特に嬉しかったことを教えてください。
鈴木さん:一番嬉しいのは、保護した子の命を救い、里親さんにつなげられた時です。
難病や感染症があり、里親さんにつなげられず、私たちのもとで暮らす子もいます。
ミルクをあげて育てていても、亡くなってしまう子もいます。
そういう時は、メンバーも本当に落ち込みます。
それでも、病気だった子が元気になったり、新しい家族につながったりした時の喜びがあるから、活動を続けられるんだと思います。
進学などを理由に、一度は活動を休もうとしていたメンバーもいました。
でも、子猫を助けてほしいという相談が入ると、「やっぱり放っておけない」と、もう一度預かりを始めてくれました。
それだけ、命をつなげられた時の喜びは大きいんです。
ー活動を応援してくださる方の存在も大きいのでしょうか?
鈴木さん:本当にたくさんの方に支えていただいています。
イベントに来てくださったり、フードや物資などの支援を直接持ってきてくださったりします。
テレビやイベントを通して活動を知り、応援してくださる方も増えました。
批判されたり、子どもたちが寄付を募ることに対して厳しい言葉をかけられたりしたこともあります。
辞めたいと思った子もいました。
それでも、「言われたことより、今救わないといけない命の方が大切」と、みんなで活動を続けてきました。
6:「預かれないから何もできない」ではない
動物のために何かしたい学生へ
ー動物のために何かしたいけれど、学生の自分に何ができるか分からないという方へ、アドバイスをお願いします。
鈴木さん:絶対に、何もできないということはないと思います。
犬や猫を預からなければ、保護活動ができないわけではありません。
現状を知ることも保護活動です。
知ったことを誰かに伝えたり、問い合わせたりした時点で、もう行動を始めています。
手書きのポスターやチラシを作って、学校や地域のお店、猫カフェなどに掲示をお願いすることもできます。
それは、誰にでもできる活動です。
ー活動が、子どもたち自身の変化にもつながっているのでしょうか?
鈴木さん:学校に行けなかったり、人と話すことが苦手だったりする子でも、犬や猫のためなら力を発揮できることがあります。
家や学校とは別に、自分の役割を持てる場所があることは大切です。
イベントで自分が作ったハンドメイド作品が売れたり、来場者に「ありがとうございます」と伝えたりする中で、少しずつ人と話せるようになった子もいます。
人前で話すことが苦手だった娘も、犬や猫のことならステージで話せるようになりました。
できないと決めつけるのではなく、自分にできることから始めてほしいです。
実際にイベントへ参加した高校生が、帰った後すぐにチラシを作り、学校に掲示してもらったこともありました。
小さな行動でも、そこから活動は始まります。

7:支援を負担にしないコラボレーション
売上は医療費やフード代へ
ー今回のアパレルコラボレーションのお話を聞いた時、メンバーの皆さんはどのように感じましたか?
鈴木さん:最初に心配したのは、商品の在庫を私たちで購入して抱えなければならないのではないか、ということでした。
医療費やフード代が多くかかっているので、「商品を仕入れるお金まで必要なのでは」と、メンバーから心配する声がありました。
在庫を持たなくてもいい仕組みだということを、あらためて確認しました。
ー今回のコラボによる支援は、どのように使いたいと考えていますか?
鈴木さん:支援は、主に医療費として使わせていただきたいです。
週に何度も病院へ通っている子や、継続して治療が必要な子がいます。
フードもすぐになくなってしまいます。
医療費の負担が特に大きいので、支援していただけることは本当に助かります。
8:話せなかった子が、ステージに立てるようになった
活動の中で生まれたメンバーの変化
ーワンニャンピースマイルで活動する中で、メンバーの皆さんにはどのような変化がありましたか?
鈴木さん:人と話すことが苦手だった子が、イベントでは来場者と話せるようになりました。
人前に出たくなかった子が、ステージやテレビで自分の言葉を話せるようになったこともあります。
犬や猫のことになると、自分から話したり、明るい表情でイベントを楽しんだりする姿が見られます。
ー年齢の違うメンバー同士の関わりについて、どのような声がありますか?
鈴木さん:「小学生にとって、年上のメンバーと関わる機会はなかなかない」という声もありました。
活動を通して一緒に過ごす中で、年齢の違うメンバー同士でも、すぐに打ち解ける姿が見られています。
また、小学5年生でミルクのお世話にも関わっているメンバーの保護者からは、「この1年で、命の大切さや、お世話の重要さを大きく学んだと思う」という声も届いています。
日々、出産する犬猫や、ミルクが必要な子、病気の子、看取りが必要な子と関わる中で、動物の病気や薬についての知識も身についていきます。
将来、動物看護師など、犬や猫に関わる仕事を目指している子もいます。
一方で、資格取得の難しさや、動物関係の仕事だけで生活していくことへの不安を感じ、別の仕事も考えている子もいます。
それでも、多くのメンバーが、何らかの形で犬や猫に関わりたいと考えています。

9:いつか、みんなが集まれるシェルターを
夢だけでは進めないからこそ、現実と向き合う
ー今後、新しく挑戦したいことや、広げていきたい活動はありますか?
鈴木さん:ずっと実現したいと思っているのは、シェルターを作ることです。
現在は、それぞれの個人宅で保護しています。
みんなが集まることができ、活動を見てもらえる場所があればいいなと思っています。
ただ、香川県では殺処分される犬や猫に関する相談が多く、シェルターを公開すれば、すぐに保護依頼でいっぱいになる可能性があります。
すべての命を受け入れることはできません。
シェルターを運営するには、建物だけでなく、人件費、医療費、フード代、24時間お世話ができる体制も必要です。
自分たちがすぐに駆けつけられる場所でなければ運営は難しいですが、近隣の空き家は費用も高くなります。
作ることよりも、その後どう維持していくかが大きな課題です。
それでも、シェルターは娘やメンバーたちの共通の夢です。
まずは搬送費や医療費など、今の活動を続けるためのクラウドファンディングも検討しながら、どうすれば実現できるか話し合っています。
10:若い世代が動けば、未来は変えられる
読者と活動を支えてくださる方へ
ー最後に、インタビューを読んでいる皆さまへ伝えたいことをお願いします。
鈴木さん:娘や子どもたちが一番願っているのは、若い世代がもっと動物の問題に関心を持ち、一緒に行動してくれることです。
最近は、自分たちで団体を立ち上げたり、動物のために動いたりする学生の姿も見られるようになりました。
未来を担う若い人たちが団結して動けば、殺処分のない日本に近づけるのではないかと、子どもたちはいつも話しています。
犬や猫を預かることだけが活動ではありません。
知ること、伝えること、できることから行動すること。
小さな一歩でも、命を守る活動につながります。
諦めずに、自分にできることを一緒に続けていけたらと思います。

