「猫活」を当たり前の言葉に。年間約500頭の命をつなぐ、ねこかつの挑戦

「猫活」を当たり前の言葉に。年間約500頭の命をつなぐ、ねこかつの挑戦

車いっぱいに保護した犬や猫を、自分のもとで受け止めることができなかった——。

2011年、東日本大震災後の福島でレスキュー活動に参加した「ねこかつ」代表の梅田さんは、その経験から「自分で保護できる環境をつくりたい」と強く思うようになりました。

そして2013年、埼玉県川越市に保護猫カフェ「ねこかつ」を開設。現在は2つの保護猫カフェと2つのシェルター、約200人のボランティアとともに活動し、年間約500頭の猫を保護・譲渡しています。

活動の原点から、人に慣れていない猫に特化した「最強の保護猫譲渡会」、そして今回のコラボレーションに込めた思いまで伺いました。

「自分で保護できる環境をつくりたい」

活動の始まりは、2005年頃にさかのぼります。

自宅の近所では猫が繁殖し、生まれた子猫の多くが幼いうちに命を落としていました。その状況を放っておくことができず、TNR活動を始めました。

当時は賃貸マンションに住んでいたため、多くの猫を保護できる環境にはありませんでした。それでも、自分にできることとして活動を続けていました。

大きな転機となったのが、2011年の東日本大震災です。

福島県大熊町や双葉町で、取り残された犬や猫のレスキュー活動に参加。車いっぱいの犬や猫を保護しましたが、自分で引き受けることができず、ほかの団体へ託すことになりました。

「自分で保護できる環境をつくりたい」

その思いが、ねこかつを始める大きなきっかけとなりました。

保護猫との出会いを、もっと身近なものに

2013年当時、譲渡会場へ入ることは、多くの人にとって敷居の高いことでした。

そこで、保護猫と出会える場所をもっと身近につくり、街の中で堂々と保護活動を行いたいと考え、保護猫カフェという形を選びました。

団体名の「ねこかつ」は、猫の保護活動を意味する「猫活」から付けられています。「猫活」は、活動を始めた当時に代表がつくった言葉です。

猫の保護活動を「猫活」と呼ぶことが当たり前になるほど、活動を身近なものにしたい。その願いが、名前に込められています。

猫のペースと、人の暮らしをつなぐ

人に慣れていない猫を新しい家族へつなぐため、ねこかつが大切にしているのは、その猫のペースに合わせることです。

犬のトレーニングのような一律の方法論はないと考え、無理に距離を縮めるのではなく、時間をかけて少しずつ人に慣れてもらいます。

譲渡では、猫の性格だけでなく、迎える方の経験や生活スタイルも重視しています。

初めて猫と暮らす人もいれば、猫の飼育経験が豊富な人もいます。長時間の留守番ができる猫がいる一方、子猫のように長い留守番が難しい猫もいます。それぞれの暮らしに合った猫との生活を提案しています。

現在、ねこかつは2つの保護猫カフェと2つのシェルター、預かりボランティアによって猫を保護しています。

保護猫カフェで暮らしているのは、主に新しい家族を募集できる状態になった猫です。シェルターでは、保護されて間もない猫や、まだ人に慣れていない猫、病気などにより譲渡が難しい猫が暮らしています。

預かりボランティアの役割もさまざまです。つきっきりで授乳するミルクボランティア、人に慣れた子猫や成猫を預かって譲渡会へ参加する人、人に慣れていない猫を中長期で預かり、人馴れを支える人もいます。

人馴れを終えた猫が保護猫カフェにデビューすることもあり、カフェ、シェルター、預かりボランティアが連携して、一頭一頭を新しい家族へつないでいます。

約200人のボランティアと、20近い譲渡会場

ねこかつの大きな強みは、約200人のボランティアと、数多くの譲渡会場です。

定期・不定期を合わせると、譲渡会の会場は20近くにのぼります。百貨店やホームセンター、IKEA、大型商業施設など、これまで保護猫と接点がなかった人にも届く場所で譲渡会を開催してきました。

多くの人が集まる場所に出向くのは、家族を必要としている猫と出会ってもらうためだけではありません。保護活動の現状を、より多くの人に知ってもらうためでもあります。

出会いの場が増えれば、譲渡の可能性が広がります。譲渡によって保護する場所が空けば、新たな猫を受け入れられるようになります。

こうした循環をつくることで、ねこかつは年間約500頭の猫を保護し、新しい家族へつないでいます。

“シャーシャー猫”を集めた「最強の保護猫譲渡会」

ねこかつでは、人を威嚇するほど警戒心の強い猫に特化した「最強の保護猫譲渡会」も開催しています。

一般的に、人に慣れていない猫は譲渡が難しいとされています。譲渡までに時間がかかれば保護施設で長く暮らすことになり、団体は新たな猫を受け入れにくくなります。

そのため、保護団体でも受け入れが難しく、行政施設では殺処分の対象になりやすい現状があるといいます。

人に慣れていない猫は、それまで人から怖い思いをさせられてきた可能性があります。それにもかかわらず、保護や譲渡につながりにくい。その状況を少しでも変えるために始めたのが、“シャーシャー猫”だけを集めた譲渡会です。

人に慣れていないという理由だけで、幸せになる可能性を閉ざしたくない。「最強の保護猫譲渡会」には、そんな思いが込められています。

両後ろ脚を失った「エース」が教えてくれたこと

これまでの活動で特に心に残っているのが、下半身麻痺があり、毎日の排泄介助を必要としていた「エース」です。

エースは、ねこかつが初めて保護した、下半身麻痺によって排泄介助が必要な猫でした。さらに、両後ろ脚を切断しなければならないほど重い状態でした。

大きなハンディを抱えたエースに里親様が決まったときは、本当にうれしかったといいます。

現在では「二本足のエース」として、テレビやYouTubeでも知られる存在になりました。

エースとの出会い以降、ねこかつでは下半身麻痺があり、日常的な排泄介助を必要とする猫も数多く保護しています。

寄付金を、重い病気を抱える猫の医療費に

ねこかつでは、約250頭の猫を常時保護しています。

日々のフード代も必要ですが、さらに大きな負担となっているのが医療費です。

保護される猫の中には重い病気を抱え、里親様とのご縁につながることが難しく、シェルターで生涯を過ごす猫もいます。

今回のEAGER BEAVERとのコラボレーションによる寄付金は、そうした猫たちの医療費を中心に活用される予定です。

継続的な治療を支え、病気を抱える猫たちが安心して暮らせる環境を守る力になります。

自分の家の猫に向ける愛情の、1%でも

ねこかつが伝えたいのは、猫を取り巻く問題は、行政による殺処分だけではないということです。

行政施設での殺処分は、表に現れた問題の一部にすぎません。その外側では、飢えや渇き、交通事故によって命を落とす猫もいます。また、日本の一部には、猫が駆除や狩猟の対象となる地域もあるといいます。

自分の家で暮らす猫を、本当の家族として大切にする人は増えてきました。

その愛情の10%、あるいは1%でも、自分の家以外の猫に向けてもらえたら、猫と人との関係はもっと良いものになるのではないか——。ねこかつは、そう考えています。

保護猫について知ること。譲渡会へ足を運ぶこと。活動を周囲に伝えること。猫を迎えるときに、保護猫という選択肢を考えること。

一人ひとりの「猫活」が、行き場を失った猫の未来を変える力になります。



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