絶滅寸前の日本在来馬を未来へ──大阪「和種馬ホースランド」が伝える、馬と人の新しい関係

絶滅寸前の日本在来馬を未来へ──大阪「和種馬ホースランド」が伝える、馬と人の新しい関係

日本に昔からいる馬、「和種馬(わしゅば)」を知っていますか。
かつて日本各地に存在していた在来馬は、いまでは8種類、総数も1000頭ほどまで減少し、絶滅の危機にあります。

そんな和種馬と共に生き、その魅力を伝え続けている場所があります。
大阪にある「和種馬ホースランド」です。

和種馬に乗り、ウエスタン馬術を体験し、時には甲冑や和装で馬に乗る──
ここでは、馬と人との距離が驚くほど近い体験ができます。

なぜこの場所は生まれたのか。
和種馬はどんな馬なのか。

創設者の横山さん、スタッフの稲葉さんに話を聞きました。

 

1. 和種馬を守りたい──施設創設の背景

ー施設の創設のきっかけや背景を教えてください。

横山さん: 大きくは2つです。ひとつは、日本の在来馬(和種馬)が減っていて、そこを助けたいという気持ち。もうひとつは、私自身がヨーロッパでウエスタン馬術の「トレール」をやってきた経験です。トレールは足腰が丈夫な馬じゃないと難しい。日本の馬は体は小さいけど足腰が強い。そこを活かせば保護にもつながるのではないかと考えました。

ー場所はどうして大阪に?

横山さん: 便利だからです。やるなら大阪がいいなと。

ーヨーロッパではどんな馬を使うんですか?

横山さん: クォーターホースです。世界的にもウエスタン馬術で最も多く使われている馬種です。

 日本は競馬の引退馬(サラブレッド)を乗馬クラブが使うことが多いですが、サラブレッドは走るために調教されていて、足腰が強いタイプでもなく、気性面でも乗馬には向いていないんです。

ーここにいる馬たちは体格もしっかりしてますね。

横山さん: しっかりしてます。


2. 乗馬体験から甲冑コスプレまで──和種馬ホースランドの活動

 現在の主な活動内容を教えてください。

横山さん: 乗馬のレッスン、ふれあい(ブラッシングなど)、そして和装や馬装を含めた撮影・コスプレでの乗馬体験が中心です。

 コスプレを始めたきっかけは?

横山さん: 僕は武術をヨーロッパなどで教えて回っていて、戦国時代の武芸には「馬に乗る」が必ずある。甲冑をつけて馬に乗って戦うのを再現できないか、という発想がありました。

ただ、馬の調教が大変で一度ギブアップして、ならコスプレとして楽しむ形ならいけるだろう、と。

 その延長でイベントも?

横山さん: そうです。騎馬戦のようなことも軽くなら。本格的にやると馬が怖がって不安定になる。あらかじめ打ち合わせた範囲で行えば、馬もそこまで怖がらない。

―当時の合戦ではどんな馬が使われていたんですか?

稲葉さん: うちにいるようなもので、サイズ感は今の道産子くらい。ただ、去勢していない馬で興奮しやすく、人を踏んだり噛んだりするような気性の馬もいたらしいです。

横山さん: 面白いのは、和種馬はオス同士で「馬相撲」をする。ぶつかるけど、大怪我するほどはやらない。前足が崩れて地面についたら負けで、それ以上はやらない。

 戦国の馬も、馬同士でそういう崩し合いをしていた可能性があると思います。主人には大人しいけれど、相手には荒っぽい気性が残ってきたのかもしれない。うちの馬も、人には人懐っこいけど、初めての人には匂いを嗅いだり耳を絞ったりして用心します。

3. 原野を駆ける70頭の群れ──在来馬と出会った衝撃


 在来馬との交流で、特に印象的だった体験は?

横山さん: 最初、日本の在来馬を助けたいと思って、北海道で道産子を見に行ったときの光景です。原野で70頭ほどの馬が群れで走る光景でした。まるで馬の嵐 のようでした。

稲葉さん: 1頭が走ったら全頭走るんですよ。

横山さん: うちのサイトにも動画を載せてます。渦
のように見えるんです。
稲葉さん: でも人間には突っ込まない。3mくらいまで来たらスッと避けます。

―ここにいる馬たちはどこから?

横山さん: 北海道から連れてきました。

 コスプレ体験の反響は?

横山さん: 甲冑を着たい、侍の格好で乗りたい、という人は多い。女性の参加者も多いです。

横山さん: 特に印象に残ってるのは、結婚式のイベントで花嫁衣装で来られた方。ドレスでは跨ることができないため、横乗りで対応しました

稲葉さん: 日本は本来、馬に乗るなら袴のような格好で乗っていたはずで、海外のドレスで横乗りみたいな文化はあまり聞かないですね。


4. 和種馬の魅力──人と近い距離で生きる馬

―ここならではの魅力、誇りに思う点は?

横山さん: 和種馬に乗って、ウエスタン馬術のトレイルをやっていること。日本ではそもそもウエスタン馬術自体を行っている施設が少なく、和種馬でやっているのは多分うちだけ。そこがウリだと思います。

横山さん: もうひとつは、馬たちが人懐っこくて優しいこと。サラブレッドとは性格も前提も違う。

 優しさは育て方ですか、元々ですか?

横山さん: 道産子の性質もあります。集団で生きて、寒さの中で寄り添ってきたからか、距離感が近い。そこをうまく扱うと、人とも距離が近くなって懐く。
稲葉さん: ただ、こじらせると大変で、道産子でも手がつけられない例もあると聞きます。

横山さん: そう。やり方次第です。

私の感覚では、彼らは自分たちを馬だと思ってないくらいの距離感で、人間を仲間として見ている状態だとすごく良い。ただ、調教を1つ間違えると、箸にも棒にもかかんない状態になって、もう荒れまくって危ないです。

5. 頑固な馬「のぞみ」と、命をつないだ子馬の物語


 馬とのエピソードで印象に残っていることは?

横山さん: 和種馬だと「のぞみ」です。最初、施設ができる前に山の方の小さな牧場を借りて置いていた。調教して鞍をつけても、跨いだら一歩も動かない。あんなに頑固で動かない馬がいるのかと驚きました。

 どうやって動くように?

横山さん: 何日か乗るのをやめて、引いて一緒に歩くところから。仲良くなって動き出して、そこから少しずつ。
数歩でも動き出せば、あとは少しずつ距離を伸ばしていけばいい。

それと白い「リカ」。最初は乗ったらロデオのように振られて落とされました。

稲葉さん: その後、子どもを産んで落ち着いてからは乗れました。

横山さん: あと、のぞみの子「ほずみ」。生まれたとき衰弱していて、獣医さん呼んで点滴も用意して、
1週間ほどほとんど眠れないほど気にしていた。そこから少し元気になって外に出したら動き出して、すくすく育った。あれは本当に印象的でした。


6. 個性豊かな馬たち──チャリティーグッズへの期待

 今回のチャリティアパレルとのコラボについて、期待や可能性は?

横山さん: 期待というよりも、うちの馬のキャラクターに合った面白いグッズを作りたい。ユーモラスなものにしたいですね。

例えば「カムイ」。神に威力の威
でカムイ。神馬のバイトもしていたけど、動きたくない、走りたくない、働きたくないの三拍子。

でも、おやつがもらえるならやる、みたいな(笑)。その人間っぽさを、どこか社会風刺っぽいユーモアとしてグッズに落とし込めたら面白いと思う。

―カムイくん、ファンクラブあるんですよね?

稲葉さん: 20人ちょっと。

 1頭に2030すごいですね。

横山さん: 100人くらいかと思ってたけど、外れました(笑)。

7. 日本在来馬はいま8種類、約1000──絶滅の危機


―和種馬を知らない方へ、特に知ってほしいことは?

横山さん:
 和種馬は、現在は8種類まで減っていて、総数も全て合わせて1000頭ちょっとしかいない。絶滅寸前です。
―元々は?

横山さん: 何十種類もいたと言われています。少ない種類だと30頭くらいしかいない。だからまず知ってもらい、守ろうとしなければ本当に絶滅してしまう。


8. 一番大切なのは「怪我をさせないこと」

―馬たちに対して、日々特に気にかけていることは?

横山さん: 病気や怪我をさせないこと。それだけです。

―どんな病気が多いですか?

横山さん: 一番多いのは疝痛(腹痛)。消化不良やガス、便秘など原因はいろいろ。馬は立てなくなると命に関わるので、餌などは特に気をつけます。

―骨折も命に関わると。

横山さん: はい。立てなくなると命に関わります。

稲葉さん: 最先端では治せる例もあるかもしれないけど、基本的には難しい。馬は心臓が体に対して小さくて、立って動けないと循環が悪くなる。

9. 大阪でホーストレッキングを──次の挑戦

 今後の展望は?

横山さん: 大阪府内の山の方で、ホーストレッキング(山道を馬で歩く体験)をできる場所を探したい。大阪府で外乗りができるところはほぼない。多くの方が遠方まで行って体験しているので、うちが主催できたらと思っています。

稲葉さん: 都会だと車などに驚いて危険なので、成立しにくいんですよね。


10. 「まず知ってほしい」──和種馬へのメッセージ

 最後に、読者や来訪者へ一言お願いします。

横山さん: 日本の馬、和種馬を知らない方が多いと思うので、ぜひ「日本在来馬」で一度調べてみてください。そこから興味を持ってもらえたら嬉しいです。

 ありがとうございました。

 

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