一般社団法人 猫と紡ぐは、岡山を拠点に、保護猫のお世話や譲渡活動を行う団体です。
始まりは、家族で続けてきた保護活動でした。
宮崎にいた頃は、多い時で90匹ほどの保護猫を抱え、餌代なども実費で支えていた時期があったといいます。
2024年には、一般社団法人として法人化。
「かわいそうだから保護する」だけではなく、
猫を取り巻く社会問題にも、責任を持った形で向き合うための一歩でした。
今回は、一般社団法人 猫と紡ぐの澤野さんに、団体名に込めた想い、家族で続けてきた活動、現在の譲渡活動、そしてEAGER BEAVERとのコラボレーションについて伺いました。
1. 愛おしいからこそ、責任がある
―「猫と紡ぐ」という名前には、どんな想いが込められているんですか?
澤野さん:「紡ぐ」という言葉には、1つ1つの出来事が人生を作っていくという意味があるそうです。
猫との生活は、すごく愛おしいものです。
でも、その時間がずっと続くわけではありません。
愛おしいと感じるほど、いつか終わりが来ることへの不安もあります。
だからこそ、猫たちが幸せな日々を送れるようにしたい。
その責任感と向き合いながら、猫と一緒に人生を紡いでいく。
そんな想いを込めて、「猫と紡ぐ」という名前にしました。
これまで、ネグレクトや虐待など、厳しい現状も見てきました。
それでも、猫たちが人と一緒に幸せに暮らせるように。
そんな願いを込めています。
2. 「かわいそう」だけでは続けられない
―2024年に法人化されたきっかけは何だったのでしょうか?
澤野さん:もともとは、家族で猫を保護していました。
個人活動というより、猫をたくさん保護している家族、という感じです。
猫の数が多くなってきた中で、支援してくださる会社さんがありました。
でも、その会社さんがコロナの影響で経営難になり、支援をいただけなくなったんです。
そこから、自分たちでやっていかなければいけない状況になりました。
知り合いもいない中で情報を集めていくうちに、猫の問題は、ただ「かわいそうだから保護する」だけではないと感じるようになりました。
自分たちのもとにいる猫たちを守ること。
そして、微力でも、猫を取り巻く社会問題に向き合うこと。
そのために、法人として責任を持って活動していきたいと思いました。
それが法人化した理由です。
―もともとは、宮崎で活動されていたんですよね。
澤野さん:はい。出身は宮崎県です。
私以外の兄弟は宮崎にいて、宮崎で保護活動をしていました。
私は岡山にいたのですが、宮崎で活動している家族が大変そうだったので、岡山で何か力になれないかなと思っていました。
最初は啓蒙活動のようなことをしたかったんです。
でも、そういう活動をしていると、保護が必要な子が出てきます。
それで、保護活動も併用するようになりました。
その後、一番上の姉が「集合した方がいい」と考えて、岡山に集まることになりました。
―岡山を選ばれた理由はあったんですか?
澤野さん:私が岡山にいたことが大きかったと思います。
あとは、当時支援してくださっていた会社の方が三重県の方でした。
姉が宮崎、その方が三重、私が岡山。
その中間地点のような形で、岡山になったのだと思います。
3. 家族で続けてきた保護活動
―家族で活動していることは、「猫と紡ぐ」さんの強みですか?
澤野さん:強みだと思います。
母が、私たちが小さい頃から捨て猫を拾って、今で言う里親さんにつなげるようなことをしていました。
兄弟もみんな動物が好きで、困っている猫や犬がいたら自然と助けていました。
動物のこと以外では、意見が違うこともあります。
でも、動物のことになるとまとまりやすいんです。
そこは、家族でやっている強みだと思います。
―以前から、かなり多くの猫を保護されていたんですか?
澤野さん:宮崎の頃は、一番多い時で90匹くらいいました。
全部保護猫です。
餌代なども、宮崎の頃はすべて実費でした。
宮崎での最後の2年くらいに、姉が三重県の方と知り合って、支援をいただけるようになったのだと思います。
それまでは完全に実費でした。
平均すると、40〜50匹くらいいる時期が多かったと思います。
姉たちは30年ほど前、もしくはそれ以上前から続けていました。
私自身は15年くらいになります。
4. 今の中心は、譲渡につなげること
―今は、どんな活動が中心ですか?
澤野さん:中心は、シェルターの猫のお世話と譲渡活動です。
特に譲渡活動が大きな軸になっています。
譲渡は、譲渡会とチラシ、SNSを使って里親さんを探しています。
里親募集サイトは使っていません。
去年は、40匹くらい譲渡することができました。
シェルターは岡山にあります。
自宅兼シェルターのような形です。
5. 家族で活動できること。そして、誰かの助けになれること
―団体として誇りに思う部分や、「猫と紡ぐ」ならではの強みはどこにあると思いますか?
澤野さん:姉妹でやっていること、家族でやっていることは、うちだけではないと思います。
でも、私はもともと1人で活動していて、その後、家族と一緒にやることになったので、それはすごく強みだと感じています。
誇りに思える瞬間はあります。
ただ、まだまだだと感じることも多いです。
それでも、誰かの助けになれた時は、やっていてよかったと思います。
うちもいっぱいいっぱいなので、困っている方がいても、できることは多くありません。
それでも、猫ちゃんにとっても、私たち家族以外の誰かにとっても、少しでも役に立てたと感じられた時は、やっていてよかったと思います。
6. コーヒーを飲むことが、猫を想うきっかけになる
―「猫茶」や「猫を助けるコーヒー」は、どういう想いで作られたんですか?
澤野さん:法人になって、抱えている猫も多いので、お金を稼がないといけない状況がありました。
猫茶は、因島の杜仲茶を紹介していただいたことがきっかけです。
販売元が尾道で、尾道はさくら猫が多い場所でもあるので、ご縁を感じました。
社長さんも「ご縁を感じますね」と言ってくださって、猫の活動に使ってもらえたら嬉しいということで、猫茶を商品化しました。
「猫を助けるコーヒー」は、たまたま行った催し物で出会ったコーヒーがきっかけです。
すごくおいしいコーヒーで、私自身もコーヒーが好きだったので、ドリップパックなら手に取りやすいと思いました。
猫のために何かしたいと思っても、大きなことはできないという方もいると思います。
でも、コーヒーを買って飲むことで、猫のためになる。
そういう気軽な形なら、参加しやすいと思ったんです。
飲んでいる時にも、「猫を助けるコーヒー」というシールも貼っています。
それを見ながら、保護猫や野良猫のことに少し思いを馳せてもらえたら。
そんな気持ちも込めています。
7. 5、6匹のはずが、35匹だった
―これまでの活動で、特に印象に残っている出来事はありますか?
澤野さん:2024年12月の出来事が印象に残っています。
山道の人目につく場所に、猫が5〜6匹いるという話がありました。
その猫たちをTNRする予定だったんです。
でも、実際には5〜6匹では終わりませんでした。
最終的には35匹。
そのうち6匹くらいが妊婦でした。
もともとはTNRの予定でしたが、いたずら目的で人が来る可能性があったり、場所も危なかったりしたため、全匹保護することになりました。
2匹以外はすべてうちに来て、里親を探すことになりました。
慣れていない子もいたので、少しずつ里親さんにつないでいきました。
―かなり大きな現場ですね。
澤野さん:そうですね。
保護活動をしていると、本当に毎日が学びです。
印象に残っているのは、オールアズワンさんという犬の団体の代表の方のお話です。
今73歳か74歳くらいの方なのですが、60歳から保健所に通い、1人で必死に引き出しをされて、殺処分0にされた方です。
その方から、「とにかく続けること」「続けるしかない」ということを聞きました。
それが今も、すごく心に残っています。
―他の団体さんとの関わりもあるんですか?
澤野さん:多くはありませんが、オールアズワンさんにはかなりお世話になっています。
イベントがある時には、場所をお借りして譲渡会をさせてもらったりしています。
瀬戸内ドッグパークさんにもお世話になっています。
月に2回、スペイクリニックさんを呼んで避妊・去勢手術を行う機会があり、そこでもお世話になっています。
一緒に現場に行ったり、他の団体さんのお手伝いをしたりするところまでは、まだなかなかできていません。
関わっているというより、お世話になっている団体さんがいる、という感覚です。
8. 最初は、正直怪しいと思った
―今回のアパレルコラボの話を聞いた時、最初はどう感じましたか?
澤野さん:最初は、正直怪しいと思いました。
「そんなうまい話があるのかな」と。
ちょうど同じ時期に、別のメールも来ていたんです。
女性事業家が集まるような内容のメールだったのですが、うちとは全然関係がなさそうで、少し疑わしい感じもありました。
なので、最初は疑いました。
でも、企画書を読んだ時に、すごく良い企画だと思いました。
動物関係のことを前向きに伝えていく企画だと感じたんです。
私は、こういう企画があることを全然知らなかったので、「こういう新しい流れがあるんだ」と思いました。
それは嬉しかったです。
9. 寄付金は、医療費へ
―今回のコラボによる寄付金は、どのように活用される予定ですか?
澤野さん:食費などは、支援物資をいただくこともあります。
もちろん、すべてが支援で賄えているわけではないので、食費や雑費もかかっています。
ただ、一番大きく負担がかかるのは医療費です。
今回の寄付金は、医療費に充てさせていただこうと思っています。
10. 大変なことじゃなくていい。できることからでいい
―最後に、保護活動をまだ知らない方へ伝えたいことはありますか?
澤野さん:世の中には、まだまだ手を差し伸べないといけない動物たちがたくさんいます。
やっと現場が終わったと思っても、捨てていく人がいる。
終わったと思っても、次の時期に行くと、また同じくらいの数がいる。
そういう話を聞くと、助けなければいけない動物が、まだまだたくさんいるのだと感じます。
でも、大変なことをしなければいけないわけではありません。
自分にできそうなところからで大丈夫です。
少しずつ、優しい気持ちで関わる人が増えていけば、その輪は広がっていくと思います。
楽しいことの中の1つに、何かを助けることが入っていたら。
それだけですごくありがたいです。

