コレクション: ツシマヤマネコを守る会

絶滅の危機にあるツシマヤマネコ。
その小さな命を守ろうと立ち上がったのが「ツシマヤマネコを守る会」です。
「このままでは、ニホンカワウソと同じように姿を消してしまうかもしれない」
──。そんな強い危機感から始まった活動は、最初はエサやりという小さな一歩でした。それが今では、土地を買い取り保護区をつくったり、ヤマネコが暮らしやすい環境を整えたりと、島の自然と人の営みをつなぐ大きな取り組みへと広がっています。「守るだけじゃなく、人と自然が共に生きていける未来をつくりたい」そんな想いを胸に、今日も活動を続ける会の皆さんに、これまでの歩みと忘れられない出来事、そしてこれから描く未来についてツシマヤマネコを守る会のねこりんさん、みっち〜さんにお話を伺いました。

活動を始めた背景ときっかけ

聞き手:まず、活動を始められた背景やきっかけを教えてください。 

ねこりんさん:最初に会を立ち上げたのは、昨年亡くなった山村(やまむら)会長です。始めたきっかけはニホンカワウソが絶滅するということを聞いて、「ツシマヤマネコもこのままだと危ない」と。
そこで当時の上県町の学校の先生や行政の方など、仲間
15人ほどで会を作って保護活動を始めたと聞いています。 当時、ヤマネコは天然記念物に指定されてはいたものの、行政や環境省の積極的な保護体制が十分ではありませんでした。
だから私たちは会を作って動き始めました。最初は本当に給餌、つまりエサやりからのスタートでした。

聞き手:団体としてだけでなく、皆さん個人の「出会い」も教えてください。

ねこりんさん私はもともと猫が好きで。イリオモテヤマネコは知っていましたが、ツシマヤマネコは知らなかったんです。
ある日、新聞で山村会長の記事を見て存在を知り、「まずは対馬に行ってみよう」と足を運んだのがきっかけです。

みっち〜さん:私は、ねこりんさんが運営していたウェブサイトで、ツシマヤマネコの写真を家族で見たのが始まりでした。「なんて可愛いんだ」と(笑)。
ちょうど仕事でレクリエーション企画があり、
100人ほどのお客さんを連れて行く先として私が「動物園に行きましょう!」と提案して実施したんです。そこで動物園の方から「ヤマネコのイベントがありますよ」と教えていただき、行ってみたら守る会の方に声をかけていただいて……気づけば毎年、動物園の企画をお手伝いするようになっていました(笑)。
私にとっては、ねこりんさんがきっかけですね。

2 現在取り組まれている主な活動
聞き手:現在、力を入れている活動は何ですか?

ねこりんさん保護区の整備と維持ですね。
対馬は民有地が多いので、土地を買い取ったり借りたりして保護区にし、環境を整えて「ヤマネコが来やすい・住みやすい」場所にする。そしてそれを維持する活動ですね。
もう一つはソバを播くとネズミとかが来るので、それがヤマネコのエサになるということで、ソバ畑を作っていたりしているのが普段の活動ですね。なので環境整備に特に力を入れています。

聞き手:ネズミとかが主な食料ですか?

ねこりんさんネズミや昆虫などの小動物です。なのでそういったものを増やしていこうということも活動しています。

3 ツシマヤマネコを知らない人に向けて
聞き手:ツシマヤマネコを知らない方に、何を伝えたいですか?

ねこりんさんまずは動物園で本物を見てください。
やっぱり可愛いっていう気持ちを持つところから、守りたい、保護したいって気持ちが始まると思うので、まず動物園に行ってヤマネコを見てくださいってことを言いたいですね。島に来ても見られないので。(笑)」

みっち〜さん:ちょっと私からもよろしいですか。
世の関心はやっぱりイリオモテヤマネコの方が高いと今もちょっと感じていますので、同じようにツシマヤマネコにも関心持っていただけたらなと私はちょっと思っておりますね。島に住んでいる方も、対馬と比べると西表の方がヤマネコに対する関心も高いような気がするので、島民の方も島外の方も、皆さんに今以上に関心を持っていただけたら嬉しいなって思います。

4 アパレルコラボへの期待と可能性

聞き手:今回、アパレルとのコラボに期待していることはありますか?

ねこりんさん取材時点の前々日(2025年9月8日)からクラウドファンディングを開始しました。クラウドファンディングやツシマヤマネコの現状を知っていただく手段がたくさんあった方がいいと思っていまして。今回のアパレル企画は非常にいい効果があるんじゃないかと思い、期待してお願いしました。

5 印象に残っている保護のエピソード

聞き手:忘れられない保護のエピソードを教えてください。

ねこりんさん保護区や畑に設置した自動撮影カメラに、ヤマネコが写った瞬間ですね。「この環境を実際に使ってくれている」と実感できて、心が動きます。
水場を整えた場所を使っている様子が写ったときも、やりがいを強く感じました。

6 野生動物との距離感・心がけ

聞き手:野生動物との距離感や心がけていることはありますか?

ねこりんさんここ10年ほどでイノシシとシカが非常に増え、下層植生が食べられて山が荒れてきています。その結果、やっぱり山猫の餌となる小動物が住みにくい環境になってきて、ヤマネコも住みにくいだろうということがあります。
獣害対策も進めつつ、いちばん大事にしているのは「ヤマネコが住みやすい環境とは何か」を常に考えること。下層植生が減ったわりに、思ったほどヤマネコが減っていない印象もあり、
10年も経つと環境に慣れてきて、新しい餌を取るような手段を見つけたのかなという気もするので、環境の変化にヤマネコがどう応答・適応しているのか、注意深く見ています。

聞き手:ヤマネコ以外の固有動物はいますか?

ねこりんさんツシマテンがいます。雑食性でいろいろ食べるので、基本は心配していません。両生類や昆虫は島なので未知の生物がいる可能性もありますが、環境変化で減っているのかなと思っていますね。

聞き手:未知の動物とかは見つけたことあるんですか?

ねこりんさん未知はない。わからない。未知かどうかすらわからないので(笑)。
ただ、ツシマヤマアカガエルっていう大きいカエルがいるんですけども、数が非常に少なくなっていると聞きますが、うちの前にはまだいるっていうことはわかっているので、なんか研究してくんないかなと思っています。(笑)

7 地域との関係づくり

聞き手:地域との連携や印象的な出来事はありますか?

ねこりんさん特に皆さん独自の考えを持って活動されているので、同じ活動をする機会ってのは全然ないんですね。なので、地域の他の団体と一緒に活動したっていう実績はないと思います。
ただ、ヤマネコ米の団体からは毎年寄付をいただくなど、良好な関係はあります。

聞き手:ツシマヤマネコを守る会さんで何かやられた活動とかで印象残っていることとかってありますか?

ねこりんさん印象に残っているのは保護区作ったことですかね。
70ヘクタールを日本ナショナル・トラスト協会の助成も活用しながら買収し、約8割を取得できました。交渉では「もう使わない土地だから」と快く売ってくださる方が多く、ありがたかったです。そういった活動をした時が1番、ヤマネコと直接は関係ないんですけど、印象に残っていますね。

8 保護活動に馴染みのない方へ

聞き手:保護活動に馴染みのない方へ、今の現状や想いを教えてください。

ねこりんさんツシマヤマネコは山の中で暮らしてるいっていう風に考えがちなんですけども、実は人間と共存しているっていうちょっと稀な関係があります。
山と里山を行き来して暮らしているので、人がきちんと暮らしを続け、山も守られていることが大事。だから、まずは動物園で知って、できれば対馬にも来てください。来訪者が増えれば、島の人の見方も変わるはず。移住までとは言いませんが、関わりが増えると良い循環が生まれると思います。
なのでまず動物園行ってヤマネコ見てねっていうところですね。

9 支援してくださる方への想い

聞き手:支援者の方々への想いを教えてください。

ねこりんさんやはり、動物とか自然を守るというのものはお金がかかります。私どもの場合は、皆さんの会費とか寄付金とかで賄っているので、公的な補助金はもらってないんで、皆さんの力添えで維持できているので、ぜひ協力していただければ。
皆さんの協力が対馬のヤマネコの住める環境を良くするために使われますよっていうところは言いたいですね。

聞き手:活動で手伝えること、参加できることはありますか?

ねこりんさん特に今、イノシシとシカを避けるためのワイヤーを張るとか、畑をトラクターで耕すとか、専門的な仕事が多いので、事故とかもあると心配なのでやってないんですけども、来てそういった環境見ていただくだけでも十分ありがたいので、そういった協力をしていただければ嬉しいです。

10 今後のビジョンとメッセージ

聞き手:今後のビジョンを教えてください。

ねこりんさん今クラウドファンディングを行っているんですけども、上県町を中心とした活動をしていたんですけれども、そこだけではなくて、北の方はヤマネコが比較的多いとこなんですけど、南に行くほど、生息数も減って、意識も少なくなってくるというのがあるので、そういった地域に、ヤマネコを暮らせるような環境整備を一緒にしていくってことをやっていきたいなという風に思っています。
今、クラウドファンでもやっているんですけども、上県町の南隣、峰町の海沿いの段々畑なんですけども、ここで、地元の方と協力して、段々畑の風景を取り戻すとともに、ツシマヤマネコが住めるような環境も同時に整備していこうということでやっているので、そういったことを進めていきたいと思っています。

聞き手:最後に、読者へのメッセージをお願いします。

ねこりんさん動物園へ、そして対馬へ。まずは見に来てください。

11 感想
今回のお話を伺って、ツシマヤマネコがただの「珍しい動物」ではなく、人の暮らしや自然と結びついて生きていることを知り、守る意味の大きさを実感しました。

土地を買い取って環境を整えたり、ソバ畑をつくって小動物を増やしたりと、地道な活動を続けている姿に胸を打たれました。特に自動撮影カメラにヤマネコが写った瞬間の喜びは、とてもリアルに伝わってきました。

これからは私もまず動物園でツシマヤマネコを見に行き、いずれは対馬にも訪れてみたいです。寄付やグッズ購入など、自分にできる応援をしていきたいと思います。

「知ることから始まる」という言葉通り、多くの人が一歩を踏み出すきっかけになると嬉しいです。


ツシマヤマネコを守る会

📍長崎県対馬市上県町佐護西里2619

HP : https://tsushimayamaneko.org

Instagram : https://www.instagram.com/tsushimayamaneko/

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