年齢詐称、血統書の虚偽、過酷な繁殖環境——。
代表の焼田さんは、ペット業界の“一部に存在する命が適切に扱われていない現場”を知り、「誰かが救わなければ、この子たちは消えていくだけだ」と立ち上げたのがLus Brancaです。
看取りや重篤な子を中心に迎え入れ、
土の上を歩き、太陽の光を浴び、空気を吸う。
“生きる本来の姿”をもう一度取り戻すための居場所をつくっています。

1. 保護活動を始めたきっかけと背景
奈良県天理市出身の焼田さんは、幼いころから動物に囲まれた生活を送ってきた。
道端で見かけた犬や猫を家に連れ帰り、家族として迎える──そんな日常が自然だったという。
「将来は大好きな動物に囲まれて仕事がしたい」という夢を抱き、社会人になってからペットショップの仕事に就いた。
しかし、そこで目にしたのは、思い描いていた“動物と人の幸せな関係”とはかけ離れた現実だった。
オークション会場では、年齢や血統を偽るなど、命が適切に扱われていない場面が多く見られた。「こんなことが平気で行われているのか」と衝撃を受け、同時に「何も知らなかった自分」にも悔しさを感じた。
その経験が転機となり、焼田さんは個人で保護活動を始める。
「好き」や「かわいい」という気持ちだけでなく、命の重さを見つめ直しながらの第一歩だった。
2. 現在の活動の中心と理念
現在のLus Brancaは、看取りや重篤な子を優先的に引き受ける保護活動を行っている。
多頭崩壊、繁殖引退、飼育放棄──様々な事情を抱えた動物たちが集まる中で、
「ただ助ける」だけでなく、「人にも寄り添う」活動を大切にしている。
「動物だけが助かっても、根本的な解決にはならない」
そう語る焼田さんは、命の問題を“人と社会の問題”として捉えている。
保護とは、単に命を救う行為ではなく、再び人と動物が共に生きられる未来を築くための一歩だと考えている。

3. 忘れられない出来事と学び
焼田さんがこれまでに経験した中で、特に印象的だったのが「繁殖屋崩壊」の現場だ。
当時、連れ帰った多くの犬たちは臨月を迎えており、一人での出産は不可能に近かった。
その中で、ボランティアやブリーダー、獣医師など多くの人々が協力し、命をつなげていった。
「過酷で残酷な現場ではありましたが、皆で助けたいという気持ちは同じでした」
やり方や考え方は違っても、「助けたい」という一点で心がつながった経験は、
Lus Brancaの活動における原点のひとつになっている。
4. シェルターづくりへの想いとこだわり
焼田さんの夢は、「大好きな地元・奈良の自然の中で、動物たちがのびのびと生きられる場所をつくること」。
土の上を自由に歩き、日の光を浴び、澄んだ空気を感じる──
そんな“あたりまえ”の幸せを、これまで閉ざされてきた命にも取り戻してほしいと願っている。
「できる範囲で、一匹でも多くの居場所を」
その想いで日々活動を続ける。
Lus Brancaは、保護だけでなく、“その先の幸せ”を見据えたシェルターづくりを目指している。
5. 漫画『全部救ってやる』との出会いと反響
Lus Brancaが広く知られるきっかけのひとつが、漫画『全部救ってやる』への登場だ。
この作品の作者・常喜寝太郎さんとは、保護フェスでの出会いが縁だった。
「私自身も漫画が大好きで、寝太郎さんの真っ直ぐな想いに強く共感しました」
現場のリアルと葛藤を描くこの作品は、多くの読者に“命の現実”を伝えるきっかけとなった。
焼田さんは、「漫画を通じて、どんな小さなことでも自分にできることを考えてもらえたら」と話す。
人と人のつなが利の先に、動物たちの幸せが生まれる──
Lus Brancaの活動は、その信念のもとにこれからも続いていく。

