“理想”を掲げることよりも“現実”と向き合う保護活動——Love Fiveの挑戦

“理想”を掲げることよりも“現実”と向き合う保護活動——Love Fiveの挑戦

動物保護と聞くと、多くの人が「感情に訴える活動」を思い浮かべるかもしれません。もちろんその気持ちはとても大事で必要なことではありますが、それだけでは実効性がある継続的な活動を行うことは難しいです。Love Fiveはそれに加えて、現場の課題に真正面から向き合い、感情からだけではなく「現実的な改善」を積み重ねてきました。

今回は、Love Five代表の吉井さんに、その活動の背景と信念を伺いました。

 

動物保護の世界に飛び込むきっかけ

吉井さんが動物保護活動を始めたのは2011年。きっかけは、当時の代表からのひと言でした。

「当時は殺処分ペット繁殖の現場についてぼんやりとした知識しか持っていませんでした。でも、その当時年間20万頭以上の犬や猫が殺処分され、劣悪な環境で苦しむ現実を知った瞬間、『これは放っておけない』と強く思ったんです。」

それが、Love Fiveの原点です。

 

繁殖現場の改善と保護犬カフェ

現在Love Fiveが注力しているのは「繁殖現場の環境改善」。殺処分問題は多くの方に意識される一方で、殺処分数としても公表されることのない繁殖現場の現状はまだまだ知られていません。Love Fiveでは業者に現場の環境改善を訴えかけながら、犬猫たちの負担を少しでも減らすために早期引退を促し、その活動の中で保護した子たちに新しい家族を見つける取り組みを行っています。

その拠点となるのが「保護犬カフェ」。保護した犬猫たちと気軽に触れ合える空間で、カフェやペット用品の売上なども活動資金にし、寄付だけに依存しない持続可能な保護活動を実現しています。

「カフェを通して、保護犬猫と出会える場所を日常の中に作りたかったんです。単なる支援としてではなく、自然に関わってもらえる仕組みをつくることで、継続可能な活動になると考えています。また、保護活動を身近に感じてもらえるような啓発の場になればと思います。」

 

理想ではなく現実を選ぶ理由

Love Fiveの最大の特徴は、理想論ではなく「現実的な改善」を重ねてきたこと。

例えば、いきなり生体販売をゼロにと言っても現実的には無理があります。だからこそ、業者と対立するのではなく、少しずつ改善してもらうんです。初歩的な内容になってしまうこともありますが予防注射ができていなければ『ここから始めましょう』、虫が出れば『駆虫薬を使いましょう』と、段階的に実現可能な落としどころを一緒に探すんです。」

地道ではありますが継続して改善指導をした結果、母体の負担が少なくなるように45歳で引退させる繁殖業者も増え、犬たちの健康状態も改善してきています。

 

譲渡条件に込めた柔軟性

Love Fiveの譲渡理念はシンプルです。大きな柱となるのは「ペット可の住居」「経済的な安定」「動物を大切にできること」。

加えて、去勢・避妊手術やペット保険加入などを条件にしていますが、「留守番時間」「小さなお子様がいるご家庭」「先住犬の有無」「ご年齢」などについては完全にNGというわけではなく、状況に合わせて柔軟に対応しています。

保護した子たちの安全も当然、守る必要があります。ただ、同時に保護を待っているたくさんの命もいる。繁殖現場だけではなく、一般家庭からの『飼えなくなった』というご相談も後を絶ちません。皆さんが思う以上に保護も譲渡もしなければいけない子たちがたくさんいる状況です。完璧な家庭だけに譲渡するのではなく、現実の暮らしに寄り添いながら、できるだけ多くの子を幸せにしたいんです。」

 

繁殖引退犬、捨てられた犬たちへのケア

Love Fiveでは、すべての犬猫たちへ同じように愛情を注ぎます。ただ、一般家庭から捨てられた犬は精神的なショックが大きく、特に丁寧なケアが必要です。

 

「逆に繁殖現場出身の子たちは、特定の人に執着していないからか、馴染むのが早い子が多い印象ですね。」

また、歯周病などのケアも欠かせません。体だけでなく心のケアも含めて、地道なサポートを続けています。

 

忘れられない「捨て犬」の物語

真夏の炎天下、店先に捨てられていた推定シーズーの男の子。片目は潰れ、体はボロボロ。「この子をお願いします」とだけ書かれた紙と共に電柱に繋がれていました。

「胸が締め付けられました。動物の遺棄は犯罪行為なので警察にも相談しましたが、当時は遺棄としても扱われず、どうにもできなかった。それでも必死にケアをして、手術も乗り越え、無事に里親様が決まったときは本当に嬉しかったですね。」

※遺棄は先述の通り、動物愛護法違反です。現在では警察でも犯罪として取り扱われ、昨今のケースでは捜査により犯人特定に繋がっています

 

アパレル連携で広がる可能性

Love Fiveでは、寄付された犬服などのバザーや仕入れたペット用品を販売しています。さらに、今回のように在庫リスクのない「受注販売型のアパレル連携」にも期待しています。

「新しい層に活動を知ってもらえるチャンス。グッズをきっかけに、保護犬カフェに足を運んでもらえたら嬉しいですね。」

 

知ってほしい「現実」

吉井さんは、動物に関わるすべての人に「モラルを持つこと」の重要性を訴えます。

 

「犬や猫を迎えるとき、その子がどういう背景で生まれ育ったのかを知ろうとするだけで、必然的に業界は変わっていくんです。」

例えば人気のミックス犬は、かわいさの裏にある健康リスクや繁殖の実態を知ることが大切だといいます。「知ること」が、最初の一歩なのです。

このような繁殖現場の現状はもちろん知っていただきたいですし、どこからお迎えするにしてもその子の生涯を看取る覚悟、共に生きていく時間や経済状況の予測を立てること。そして、思わぬ事態に備えて、もしもの時は日ごろからかかわりがあって託せる方がいるのか、という前提をモラルとして持ってほしいと思います。

 

 

支援のかたち

まずは保護犬カフェに遊びに来てください。それだけで活動の支援になります。SNSで広めていただくのも大きな力になりますし、新聞紙やオムツ、洗濯用洗剤などの消耗品の支援物資も大変助かります。」

Love Fiveのカフェでは、タイミングによっては保護犬猫たちの「卒業」を見届けることもできます。訪れるたびに新しい出会いと卒業がある——そんな特別な場所です。

 

最後に

「感情だけで行動するのではなく、現実を知ること。そして、できることから始めること。それが、動物たちを救う一番の近道だと思っています。」

 

感想

取材を通して、Love Fiveが「理想を掲げる団体」ではなく、「現実を変える団体」だということを強く感じました。感情論だけではなく、論理と行動で命と向き合う姿は、多くの人にとって新たな気づきになるはずです。

 

全国に8店舗展開する保護犬・保護猫カフェ。ぜひ一度、足を運んでみてください。

 

📍NPO法人 Love Five大阪府大阪市東成区東小橋31429ラッキープラザビル3Instagramlovefive.hogokencafe
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(旧 Twitter):@Pet_lovefive

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